湯楽庵的日常

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2008年 12月 14日 ( 1 )

古都の紅葉 『無鄰菴』編・その3

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いま思えば、『無鄰菴』の紅葉がいちばん綺麗なときに訪れたのかもしれません。

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『無鄰菴』には庭の隅々にまで工夫が凝らされています。
元老・山縣有朋と七代目・小川治兵衛(屋号を植治と呼ぶ)とのコラボによってつくられたこの庭園は、それまでの禅の思索を要求する「大名庭園」を否定して山里と一体化させた「自然観の庭園」なのですが、それは現在の雑木を用いた「自然風の庭」に通じていると評されているのです。

『無鄰菴』の庭園はどのようなものかを見事に伝えている一文を紹介しましょう。

(前略)
こうした骨格を形成しているのは、実に巧みに配された大量の石である。植治は琵琶湖疎水の水運を利用して、琵琶湖沿岸から出る守山石を大量に京都に運び入れて存分に使いこなした。石に対する愛着が人一倍強かったようだ。玄関前のアプローチなどに使われる畳石、せせらぎにかかる石橋、書院や茶室の沓脱ぎ石、園路の砂利、そして、流れや滝を構成する大小の石。水が石の上を滑り、石に当たり、あるいは落ちて音をたて、石を境に流れを分ける。石に、水のありとあらゆる魅力的な表情を演出させているのだ。流れ蹲踞という、しゃれた意匠も生み出した。
しかも植治は、滝、流れ、池、蛇籠、待合、蹲踞、飛石、水車、藤棚、芝生、借景など、庭を構成するこうしたすべての要素を、サービス精神旺盛にも、ほとんどすべての庭で展開して、見事な景色を造り出したのである。

それまでの大名庭園などは、名木を珍重し、海の景色を盆景として造形した。そこにあるのは、巧みな剪定による統率と、表現としてのデフォルメ、誇張、省略など。微動だにしない秩序を重んじ、囲われた塀の外には一歩も出ようとしない、封建制度を象徴する庭だともいえる。

しかし、植治は、等身大でありのままの自然の、その最も美しいと思われるさまざまな局面を引き出して、見事に再生している。背景の山里との一体化を意図しているのである。

それは間違いなく近代日本の世界観、自然観の展開だった。この庭の施主であり、自ら設計監督した元老・山縣有朋は、無鄰菴の竣工に当たって古い作庭法を否定し、自らの自然主義を貫いて、豪壮かつ雄大な自己流の庭を作ると豪語したのである。(『庭の旅』 白井 隆著 TOTO出版より引用)


ナチュラルガーデンや和風の庭をイメージするときには、ここ『無鄰菴』を訪れるといいでしょう。何かしらのヒントが与えられるに違いありません。
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by yurakuan | 2008-12-14 13:31 | 世界遺産を見る